ウェブアクセシビリティが法律で義務化されてるってホント?法制度や達成基準について見てみよう

昨今のWeb制作につきものである「ウェブアクセシビリティ」。

ウェブアクセシビリティに対応すべき!と急に言われても、どうすればいいの…?と困ってしまいますよね。

そもそもウェブアクセシビリティに基準ってあるの?具体的にどうすれば?などなどいろいろ迷うことがいっぱいです。

今回は、ウェブアクセシビリティの法制度やレベル、達成基準に迫ってみたいと思います。

また、「ウェブアクセシビリティ」という単語自体がはじめましての方は、以前基本の「き」をまとめた記事を書きましたので、そちらも参考にどうぞ。

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法律で義務化されてるってホント?

ウェブアクセシビリティについてインターネットで調べようとすると、「法律」とか「義務化」という単語が目につきます。

えっ…法律で決められてるの?僕のサイトもウェブアクセシビリティに対応してないと法律違反になっちゃうの…?!罰則あるの…?!

慌てなくて大丈夫です。いったん落ち着いて。

ウェブアクセシビリティが法律で義務化されている、というのは半分正解ですが半分は間違いです。

というのも、法律で義務化されたのは「事業者による合理的配慮の提供」というもので、ウェブアクセシビリティそのものというわけではありません。

「事業者による合理的配慮の提供」の義務化

事業者による…ごうり…てき…?はいりょ…?

突然、難しい言葉が出てきましたね。

2024年4月から、事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。
これは障害者差別解消法という法律が改正されたことを受けてのものです。

「合理的配慮の提供」というのは、ユーザーから「障害などによってサービスが利用できないので、改善してほしい」などといった依頼があった際に、事業者がその依頼に対応をすることをいい、これが義務化されました。

ひとつ例を挙げてみましょう。

たとえば、大型ショッピングモールなどにタッチパネル式の店舗案内がありますね。
目が不自由な方は、目で見てタッチ操作ができないので、音声などで案内を受ける必要があります。
音声案内が装備されていない場合、目が不自由な方は店舗案内を利用できないので、「音声案内をつけてください」をお店に依頼したとします。
お店側はその要望を受けて、店舗案内を改良して音声案内を付けました。

これが事業者による「合理的配慮の提供」です。

上記例では音声案内をつけて対応したとしていますが、それが難しい場合もあるでしょう。
そういった場合は、代替案などを柔軟に考えて提案し、ユーザー側から意見を得るなど、建設的な対話も重要です。

Webサイトも、同じように「合理的配慮の提供」が義務化となっています。
では、私たちWeb制作者は何をするべきなのでしょうか。
次は、ウェブアクセシビリティの基準について見ていきましょう。

ウェブアクセシビリティの基準

何をもってして「ウェブアクセシビリティに対応しました!」といえるのでしょうか。

実はちゃんとした基準があり、それにのっとってサイトを検査していきます。

JIS X 8341

ウェブアクセシビリティには、「JIS X 8341」という規格があります。

JISというと、よく「JISマーク」がついた製品などを目にしますが、そのJISと同じです。
「X」は「情報処理」のカテゴリに分類するという意味合いがあり、「8341」は「やさしい」の語呂合わせになっています。

JIS=日本産業規格なので、こちらは日本の基準という感じでとらえてOKです。

WCAG(ダブルシーエージー または ウィーキャグ)

ウェブアクセシビリティにはもう1つ「WCAG」という規格もあります。
「ダブルシーエージー」または「ウィーキャグ」と読みます。

こちらはW3Cという組織が定めた規格で、国際標準規格となっています。

WCAGはバージョンがあり、記事執筆時点(2025年6月)では正式勧告されているのは「WCAG 2.2」です。(ただし、草案として「WCAG 3.0」も存在しています。)

記事執筆時点(2025年6月)で、現場で実際に使われることが多いのは「WCAG 2.1」だと思います。
2.1と2.2では、達成しなければならない項目数に差があり、2.2のほうが項目数は多いです。
いずれにせよ将来的には新しいバージョンに対応していたほうが良いので、これから制作する新しいサイトであれば2.2に合わせてもよいでしょう。

さらに古いバージョンであるWCAG 2.0は、実はJIS X 8341と一致規格となっています。

JIS X 8341とWCAG、どちらを見ればいいの?

先ほども書いたとおり、JIS X 8341はWCAG 2.0と同じものです。(あくまでも記事執筆時点においては。)

記事執筆時点(2025年6月)の制作現場ではWCAG 2.1または2.2が採用されることが多いため、WCAGを見ておいたほうが情報が新しいです。

ですので、ここからはWCAGを基準として話を進めていきます。

ウェブアクセシビリティのレベル

WCAGでは「レベル」が存在しています。

レベルは「A(シングルエー)」「AA(ダブルエー)」「AAA(トリプルエー)」の3段階あります。
レベルによって検査される項目(達成基準)数が違っていて、Aが一番少なく、AAAが一番多いです。

Aだと検査項目が少ないため不十分な部分があり、AAAは一切例外を認めないという非常に厳しいもので現実的に達成が難しいことから、実際の制作現場ではAAを目指して制作を進めることが多いです。

ウェブアクセシビリティの達成基準

WCAGでは「達成基準」というものが設けられています。

バージョンやレベルごとに多少の違いがあるため、現場では「2.1.のAAを目指そう」などといった具合に目指すバージョンとレベルを決め、それに見合った達成基準で制作・検査していきます。

達成基準にはどういうものがあるのかというと、例えば以下のようなものです。
(すべてWCAG 2.2のものです)

  • 非テキストコンテンツ(1.1.1)
    ―テキストではないコンテンツ(主に画像など)には、情報を説明する代替テキストがあること(装飾の場合は除く)
  • 3 回の閃光(2.3.2)
    ―1秒以内に3回点滅するものがないこと
  • フォーカスの可視化(2.4.7)
    ―キーボードで操作できるインターフェースは、フォーカス時にフォーカスが当たったことを視認できること

他にも項目はたくさんあり、すべてをここで紹介するのは難しいので、「アクセシビリティ 達成基準」とかでググってみてください。

達成基準の正式な文書はWAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会。ウェイクと呼ばれたりします)という専門機関が日本語訳したものをまとめているのですが、かなり難しい部分も多く、すぐにまるっと理解するのは無理に近いと思います。(私もわからないところたくさんあります。)

探せばかなりわかりやすくかみ砕いてくれているサイトがたくさん出てくるので、そういったサイトも参考にしてみてください。(私もいつかそういう記事を出したい…!)

あとがき:ウェブアクセシビリティは難しい?

今回はウェブアクセシビリティに関する法制度や規格、レベルについて見てみました。
少しでも理解は深まりましたでしょうか?

達成基準のところで「かなり難しい部分が多い」と書きましたが、ウェブアクセシビリティって難しいことなのでしょうか。

いえ、ウェブアクセシビリティの階段を1つ上ることは、難しいことではありません。
自分が作ったサイトはスクリーンリーダーでどう読み上げられるのだろうと試してみたり、配色に気を付けたり。何か1つ気を付けようと意識した時点で、あなたはウェブアクセシビリティの階段を1段上っています。

画像にaltテキストを付与することだって、立派なウェブアクセシビリティの1つなのです。

すべてをパーフェクトにするのは難しくても、できることから見つけて始めてみること。
それくらいなら、難しくないですよね。

さて、次回はいよいよコーディングの観点から、具体的にどのような対応をすればよいのかを見てみたいと思います。

前提知識の解説が長くなりましたが、次回はいよいよ実践です。
引き続きよろしくお願いします!

参考リンク

ウェブアクセシビリティの考え方 8341について | 一般社団法人 日本ウェブアクセシビリティ協会(WAAJ)

事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化 | 政府広報オンライン

Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2 (日本語訳)

JIS X 8341-3:2016とは – 情報バリアフリーポータルサイト

この記事を書いた人

2019年に職業訓練校に通い、事務職→Webコーダーにキャリアチェンジ。
訓練校などでWeb制作・コーディングを勉強する初学者向けに運営しているブログです。

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